心に風が吹いた気がしたのは、親心ってなもんで。




ひだまりふたり




「ふわぁぁぁぁぁっ」
大口開けて欠伸をして、銀時はぼりぼりと頭をかく。
眠い。ともかくも、眠い。
そして天気がいい。
河原横の道は、今日も暇人で溢れているようだ。
家のない前向きなひとたちや、おいかけっこをしているこども、お魚くわえたドラネコを追っかける某主婦。
それにしても眠くて、なんでこんな眠いんだと腹がたってきた。
昨夜は深夜のちょっとやらしい番組をみて、それからどうしたっけと記憶をあさる。
ああ、そうだそうだった。いいところで神楽が起きてきて、例のごとく不潔だとか淫だとか騒いで、最終的にはこの女整形ネ。作ってるアル人体の120%はまがいものでできてるヨ。とか言って、ならんでみてたんだ。
あ、教育上よくなかったな。まぁいいか。
「あー天気いいなぁ。仕事もねぇし一発勝負しにいくかなぁ」
通りすがりの人に引かれているのも気づかず、ひとりごとをこぼしながら、頭の中は銀色の玉でいっぱいになる。
ああそういうば、今日新台入れ替えだった。
水着の彼女に会いにいくかな。
財布の中身を反芻し、悩む。
ああどうしようどうしよう。
これが漫画なら、店の前に落ちてた玉一個が、大当たりに繋がったりするのだけれど、現実は厳しい。
実際そんなんで確変出たら苦労はねーんだコノヤロー。
なんかもうわけのわからない八つ当たりに思考が変化してきたところで、ふと気づいて眼下に視線をやる。
「神楽?」
今日は遊んでくるネ。
そういってでかけたはずの彼女は、河原の土手で大の字になって寝ていた。
しかもひとりではない。
ぴったりとよりそうようにしているのは、彼女が天敵と呼んでいたはずの、沖田で。
あの、ひとを小馬鹿にしているアイマスクを着用していることから、彼も寝ているのかもしれない。
「あららららァ」
うっかり、そんな声がもれる。
みてはいけないものを、みてしまったような気がして、妙に居心地が悪い。
「どーすっかなー、どーすっかなぁ、どうすりゃいいんだコレ」
頭を抱えてみても、なにも浮かばない。
思春期の娘の、メールをうっかりみちゃっお父さんみたい気分だ。いや待て、父親になったことがないんだから、そんな感情よくしらない。
「………………」
ややしばらく、ぽかんと空を見上げた後に、銀時はもうこれしかないというような結論にたどりつく。
「よし、パチンコいくかー」
こどもたちが、なにか叫びながら銀時のわきを通り過ぎていく。
けれど銀時は、今みたものを必死で忘れようとしていたため、それさえも気づかない。
「よっし、今日こそは勝つぞー。今夜は赤飯だー。アレ? なんかおかしくね、ソレ」
そんな銀時の葛藤なんかもしらない沖田と神楽は、柔らかい陽だまりに包まれながら、すやすやと穏やかな寝息をたてていた。






END

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