正月だろうと、葬式だろうと。
別にそんなの関係がないのだ。




仲がいいのか悪いのか




「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
高く、高く。
神楽の白く細い腕が空へとのばされる。
ひとを軽々越えられるほど、高く飛んで、振り下ろした。
カコン
彼女の気合いとは裏腹に、紡がれた音は高く可愛らしい。
「へっ、チャイナ。そんなヘナチョコ玉で俺を倒せるとでも思ってんのかィ?」
彼女の打ち落としたものの落下点、すでに待機していた沖田はニヤリと笑んで告げた。
ひゅっと右腕をしならせて、振りあげる。
カンッ
また、可愛らしい音が響く。
けれどそれに反比例して、球速が尋常じゃなく早い。
すでに、目で追うことさえできない。
「おーおー。よくもまぁ羽根つきでここまで白熱するもんだなぁ」
河原にて、神楽と沖田が真剣勝負をしているのを、土手につわりこんで眺めながら、銀時は手に墨と筆をもちつつ呟く。
「ていうか、止めなくていいんですか? 沖田さん仕事中なんでしょう」
言いながら、新八もとめる気がないらしく、どっしりと銀時のとなりで座り込んでいた。
あの人外のふたりを、凡人の自分が止められるはずがないのだ。とでもいった風に。
「いいんじゃねぇのー? どーせ俺らが相手したって神楽が勝つに決まってんだし、そうなりゃ顔面どころか全身墨入れられちまうぞ。なら、アイツに相手してもらってた方が安全だ」
それに、俺めんどくせーしぃ。
鼻をほじりながら言われた言葉に、それが彼の本気なのだろうと新八も思う。
ダメ人間め。そう思いつつ、自分も神楽の相手をしなくてすんでほっとしてるのだから、大概ひとのことは言えないが。棚上げされている。
「今日こそテメーの息の根、止めてやるネェ!」
神楽の叫びに、新八は羽根つきに興じるふたりに視線を戻した。
え、なに、息の根ってっ。羽根つきだろっ!
そんなツッコミが次いで出る。
「ちょっ、神楽ちゃん! 正月早々物騒なのはやめてよね」
思わず言ってしまった。
けれど、その声は届いていないらしく、羽のみえない羽根つきはどんどん続いていく。
すごいラリーだった。
なにか黒っぽいものが、神楽と沖田の間を次々と往復しているのは、かろうじてわかるが、もうなにがなにやらだ。
「おぅチャイナ、だんだん球速落ちてんじゃねーかィ。バテてんならとっととギブアップするんだな」
「バカ言うなヨ! テメーこそ息あがってんじゃねーかヨ、さっさと降参するヨロシ」
「へっ、死んでも御免だね」
「なら死に晒せヨっ!」
カンコンタントン
羽を打ち合う中でも、丁々発止やりあうふたりは、とてつもなく仲がいいのかもしれないと、思ってため息をつく。
「ねぇ、銀さん」
ほとんど昼寝モードに入っている雇い主を一瞥して、新八は言う。
「これって、邪魔したら馬に蹴られるんですかね」
くぁと大きな欠伸をして、銀時は目をつぶる。
「さーな」
羽根つきは、まだまだ終わりそうになかった。






END

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