ひどいかな。どうかな。
でも、きみの傍じゃなきゃ、だめなんだ。




ナミダ




自分の背中にもたれ、ぽろぽろと、涙をこぼす気配に、日番谷はため息をこぼす。
泣いてる理由がそもそもわからないのだ。どうしようも、ない。
「雛森、どうした?」
「……なんでも、ない」
「嘘つけ」
ならなんで、泣いてんだ。
そう聞いたって頑固な彼女はなにも言わないだろう。
ただ、それでも、泣き場所に自分の傍を選んでくれたのは、嬉しい。
複雑な心境で、がりがり頭をかいた。
「…………ごめんね」
数刻たって、雛森が笑う気配。
鼻をすするから、足をのばして鼻紙をとり、雛森の傍へすべらせれば、行儀が悪いと叱られた。
「で、なんで泣いてたんだ?」
重ねて問うと、困ったような声がわからないと、告げた。
「ただね。すごく泣きたくなったの。だから、日番谷くんの傍にいたかった」
だから、ごめんね。なの。
まだ涙の残る声に、日番谷は嘆息した。
ああ、コノヤロウ。
そんな風に言われたら、また来いよと、言わなきゃなんねえだろ。
平坦な声で言ったって、こっちの真意なんてお見通しな雛森は、日番谷の頭にこて、と後頭部を乗せて、小さく笑った。
「そのときはまた、よろしくね?」






END

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